「四方山話」 其の七
1.外因、内因、不内外因
2.老婆心・独語
□■□ 外因、内因、不内外因 □■□
外界からの邪気におかされる病体は、まず体表部がおかされしだいに深部をおかします。
経絡思想でも外邪はまず体表部の絡脈に入りさらに経脈に侵入すると
されています。
傷寒論医学における表から裏に進むという病位の転変思想もこれと 一致しています。
このように外邪からの病因を区分した最古のものに、難経(四十九難)が あり、五邪の論説があります。 五邪とは、中風・傷暑・飲食労倦・傷寒・中湿のことで、これは 風・暑・寒・湿などの環境気象的要因に、飲食物の不摂生や過労などによる ものを加えて五種を病因としています。
これら五邪が一定の法則にしたがって五臓をおかします。 これをもっと整理した病因(疾病。病気を起こす原因)には、三因論といい、 外因、内因、不内外因に区別されます。
■外因
外感(外邪におかされた状態)は、外部から邪気(外邪)として身体に 入り、気血の不調を起こします。
・六淫(六気)
■内因
内傷(内因によって傷られた状態)は、内面からわきでる感情が五臓の 不調を起こします。
・七情(七志)
五邪の中の飲食過労という要因は、自分の不摂生の結果によるものなので、 内傷として内因の一種とされます。 なかでも飲食は、食因として、内因の重要な原因の一つになります。
食因は、五味の過剰摂取、添加物による汚染などが関係します。
「五味」
酸は肝に働き動かします。
酸の過剰摂取は筋を傷つけます。
苦は心に働き動かします。
苦の過剰摂取は骨を傷つけます。
甘は脾に働き動かします。
甘の過剰摂取は肉を傷つけます。
辛は肺に働き動かします。
辛の過剰摂取は気を傷つけます。
鹹は腎に働き動かします。
鹹の過剰摂取は血を傷つけます。
五味は、ほどほどに取れば補うのですが、 取り過ぎたり、少なくても病因となります。 不内外因=生活上の不摂生、不慮の外傷、房室(房事、房中)、創傷、虫、 火傷、獣、交通事故などによって不調を起こします。
□■□ 老婆心独語 □■□
【 知足安分(足ることを知り、分に安ずる) 】
人には、「戸籍・肉体・精神」の三つの年齢があります。 見た目より若いということは、誉めことばにもなり、嬉しい気はします。 一般的には年齢相応に見られることが社会通念です。
この三つが調和されている時が、健康な状態といえるのではないでしょうか。 室町時代の医聖:曲直瀬道三の道歌に、
○ 心をば つかうことなく 休めおき 身をば
惜しみ無く つかうべきなり
○ 養生は 飢えることなく 飽きずして
物おもわざる ほかにあらじな
とあるように、人と人との間を大切にして、慎み深く心を平静にして、 身を働かして生きることが養生の基礎となります。
富の第一は健康です。 最良の養生は健康を育みます 健康は幸福を生みます