「四方山話」 其の三十四
1.千姿万態の悲運
2.老婆心独語
□■□ 千姿万態の悲運 □■□
家の中を傍若無人に迅速這う「非」の字の形をした無視に遭遇した人達も多い事だろう。
この虫は、ゲジゲジと呼ばれ、ゲジュが通常の名である。
名の由来は、諸説あるが、暦注で天狗星(テンコウセイ)の精が下界に降りて人間の食を求める下食日(ゲジキニチ)のその日の特定の時刻を下食時(ゲジキドキ)といい、禁忌を避ける時の下食時が訛ってゲジゲジとなった説や 修行をして秘法などを修め病気を治したり、物の怪などを退散させたりするために祈祷をする行者を修験者といい、この者のように動きが素早いので験者(ゲンジャ)が訛ってゲジとなった語源説がある。
忌み嫌われる人をゲジゲジ野郎と呼ぶが今では呼ぶ事さえ、稀な存在かも知れない。
殺虫剤の容器に有害虫と一緒に名前と絵図が記載され犯罪者のあつかいを受けている
ゲジゲジは万人に嫌われ、大きい者では、足を広げれば子供の手の平サイズもある。
これが、家中の壁や床を走り廻る姿は、虫酸が走り鳥肌が立ち、阿鼻叫喚する事間違いない。
夜の訪問者のように寛ぎのリビングにでも出現すれば、ゲジゲジと叫び!皆で直ぐに戦闘モードに入り、スリッパや新聞紙など手当たりしだいで応戦し、ゴキブリのごとく逃すものかと叩き潰されるのが関の山であろう。
しかし、ゲジゲジは、益虫である。
害虫に対する捕食をして、人間生活に間接的に利益を与える虫である。
ゴキブリの天敵とされ、屋内の害虫と戦う肉食戦士である。
毒は少なく、かまれれば念の為 消毒殺菌をして置く方が良い。
それでも見てくれで毛嫌いされる、罪なき犯罪者は、罪深き益虫でもある。
類似した虫にムカデ(百足)がいる。
ムカデは有毒なのでこれに咬まれれば、病院に直行し、早い処置が必要である。
この毒の虫が、漢方では、動物生薬として、今でも使用されている。
ムカデを漢方では蜈虫公(ゴコウ・ゴショウ)と称しする。
毒は、蜂に類同した、ヒスタミン様物質(これが体内に過剰に遊離するとアレルギー症状を呈する)と溶血性タンパク質(赤血球が破壊され、成分が血漿中に出る現象)の二種類の有毒成分が含まれている。
咬まれるとしびれるような痛みが起き、発赤して数日間も腫れがひかない。
ムカデを一頭ずつ竹串に刺して、乾燥させたものを漢方では使う。
薬効は、脳卒中の後遺症、ケイレン、破傷風、顔面神経麻痺、結核、瘡瘍などの皮膚病などに用いる。
日本の民間では、ゴマ油、椿油に漬け外用薬として、傷薬や火傷の治療に使われる。
近年になって、抗癌作用が研究され、癌細胞の生長を抑制することが発見される。
世は、黒白の是非を決め付ける対極では、解決できない矛盾が多い。
情報社会では、選択肢が多様化し、正論も一本化せず、何が正しくて向が違うのかはっきり区別できない。
正当性の根拠が揺れ動き、人も社会も、白に近いグレーを歯痒くも認める風潮が起きている。
生命よりも経済が最優先、軽んじられる生命、モラルのない企業、人を人と思わない国、ゲジゲジやムカデの姿をした衆人が入り交じり、有識者の無分別な行動に、マインド・コントロールされた人材や人々が蔓延し、通説の真理に逆説を唱える。
これが負の要因を増悪し,落胆阻喪が諦めを生み、自暴自棄となり、相手の思う壺にはまってしまい、取り込まれてしまう。
己を知り敵を知り、短絡的でもいいから、生きる上での己の存在の有無を導きだす事が重要である。
「 活かすも殺すも純真たる己の所業 」
□■□ 老婆心独語 □■□
【 みずから、時の隠れた才能を見出す 】
世の中が騒がしく、今にも何かが起こりそうな感情などが激しく入り乱れる現代社会のいとなみの中で、四六時中多忙な生活をおしつけられている人々も多く、一日二十四時間あっても足りない程である。
しかし、一歩閑静なる地に踏み入れば
「山 しずかなること太古のごとし、日 ながきこと少年のごとし」
と続く、唐庚の詩の一説へと誘う。
深奥の山中に分け入れば、そこには大昔そのままの静寂さが、消えることもなく風情や味わいが、細く長く続き、あたりを支配している。
一日の長さが半年いや一年にも感じられ、幼少のように、素直で飾り気のない気持ちになって、ゆったりした時空の経過へ吸引されて行く。
時流の中にあって、ときに時流を超えた自然に帰ることが求められる。
毎年咲く花の姿を透し、自然の変わらない風景に安心して胸をなでおろす。
が、花を見る人々の姿は毎年同じではない。
永遠の自然に対して人の世の儚さを感じれば、唐庚の詩も深いおもむきが詠み取れる。
諸行無常(万物は常に変化して少しの間もとどまらない)の響き方は、心がまえによって違う。
余韻嫋嫋(ヨインジョウジョウ)の良き音色にしたいものだ。
無意識な心の状態の時こそ、
自分にも人に対しても幸福をもたらす